Tour "MODE MOOD MODE"への感想 または私は何故UNISON SQUARE GARDENのライブにまた足を運ぶのか

UNISON SQUARE GARDEN、2018年のツアー”MODE MOOD MODE”を観てきました。普段ならその感想を、という流れですが、今回はちょっと趣旨を変えて

『なぜこのバンドのワンマンライブはこんなにも素晴らしいのか』

について私なりに考察した文章を中心に書こうと思います。今回のライブのセトリ・感想はその後に。

 

 

UNISON SQUARE GARDENのライブはいつも楽しい。

単純にこのバンドが生み出す音楽が好き、メンバーがライブ中楽しそうにはしゃいで演奏しているのが好き、というのもありますが、言ってしまえば私が好きな、音楽性も全く違う他のバンドにもそれは当てはまるわけで。

 

じゃあどうしてこのバンドのライブは特別に心ときめくのだろう、と理由は分からずとも独特なワクワク感に魅せられてライブに足を運ぶ回数だけが増えていき、前回のツアー”One roll, One romance”でおぼろげながらに他のバンドが持っていない素晴らしさが分かってきて、今回のツアーに参加して遂にその素晴らしさをハッキリと言語化出来たので書いていこうと思います。

 

以下の文章は、今回のツアーにも一部言及して書いているので、未参加の方は一旦閉じていただければ。このバンドのワンマンライブを存分に堪能するにはネタバレを一切知らずに参加するのが一番だと思うので。

 

 

 

 

 

  1. ライブ定番曲のマンネリ化防止

ある程度歴史のあるバンドのライブって、ラスト付近に配置される定番の曲ってやつがあるじゃないですか。

例えばOasisDon’t Look Back In Angerを毎回エンディング付近でやっていたし、スピッツなら8823という曲をセットリストの盛り上がり所にいつも配置している。もちろんそれは長年愛される曲を作れたアーティストのみに許された特権だし、むしろ初めて観に来た人の事も考えて律儀に定番を崩さないその姿勢は立派とも思っています。

 

ただ、ある程度慣れてくると「ああいつもの感じだと次あたりであの曲やるんだろうな」「この曲やったって事はもうそろそろ本編終わるかな」とか頭の片隅で余計な事を考えながらライブを観てしまう悪い癖が出来てしまって。正直、そういう時は目の前のライブを120%楽しめているとは言い難いんです。

 

そこでこのバンドの凄い所は、これだけアルバムを出す毎にキラーチューンを量産しつつも、その「定番の流れ」を作るのを拒否するようにライブのメニューを組んでいるんだな、というのがDr. Izzyツアー前後から見え隠れしていること。

 

今回のツアーでも、近年のライブで序盤からクライマックスまで様々な場面で活躍していた天国と地獄や夜な夜なドライブ、バンドの思い入れが強いシャンデリア・ワルツ、そして代名詞の一つと言っても過言じゃないタイバニ曲は完全に外されている。

 

逆に最近外され気味だった場違いハミングバードがレギュラー復活していたと、こんな風に定番曲の中でもローテーションを作って、「いつもの流れ」をなるべく廃しているのが何よりも常連さんをワクワクさせて、一回ファンにさせたら離れさせない秘訣なんだろうなあと。後半の盛り上がりパートでもどの曲が飛び出してくるか分からないのが過去の経験から分かっていたから、今回のツアーも最後まで邪念無くステージと向き合う事が出来ました。

 

 

  1. 過去曲のセレクトと、曲同士が作用し合う有機的なセットリスト

ちょっと昔のアルバムの曲の取り上げ方。古参ファンが喜ぶ曲を選ぶだけでなく、最近のワンマンでは必然性みたいなモノが感じられる選曲をしているなあと。

 

「なかなかやらない初期の曲が聴けた!嬉しい!」っていうファン心をくすぐるのに止まらない、「この曲の後ならこの曲しかない」っていう選曲。脚光を浴びる事があまり多くなかったアルバム曲が、前後に配置された曲と作用しあって、アルバムで聴いた時とはまた違う表情を見せたり、より強い輝きを放ったりするセットリスト。

個人的に前回のツアーの「メカトル時空探検隊〜パンデミックサドンデス〜僕らのその先」という流れが本当に美しくて。ここの三曲は全部この曲じゃなきゃいけない、ユニゾンの他のレパートリーが入る隙間が無いわ、と。実はそんな風にセトリを組んでいるバンドってそうそういないんじゃないかな…とまで思っています。

 

あと単純に毎ツアーで必ず1、2曲はしばらくやっていない曲をチョイスするのが良いですよね。2ndがちょっと放置され気味な感じはしますが、それ以外のアルバムはそれなりにアルバム曲もライブで演奏されている印象。特に1stの曲は近年の曲には無い荒削りな感じがアクセントとして重宝されているって勝手に予想しています。ほぼ毎ツアー1st収録曲のどれかはレギュラー入りしていますしね。

 

 

  1. CDにはない演奏の積極的な導入、曲間の繋ぎ

ニゾンのライブの大きな特徴の一つは、「曲の繋ぎでセッション風の演奏をする」と「丸々一曲分くらいの時間を使うドラムソロ〜セッション」だと思っていて。単純にセットリストを見ただけでは分からない、生ならではのお楽しみ。後にも書きますが、CDでは耳にしていなかった演奏が曲の終わりを引き継ぐ形で始まるととてもワクワクするのです。

 

桜のあとは前の曲から全く間を置かずに

 

 

  1. 最小限に止められた音楽以外の要素

頑なに大きな会場や派手な演出を好まない約一名がいるのを反映して、普通のバンドがやるバックスクリーンの映像や大掛かりなステージセットといった要素を極力廃しているこのバンド。今回は途中グッズTシャツの卍模様が三つ降りてきたり、本編ラストでツアータイトルがドーンと描かれた幕が現れたりはしましたが、まあそれくらい。その分視線が自然と演奏しているメンバーのみに注げて、最大の要素である「演奏」のみにこちらも集中出来るんだろうなあと。これはあくまで副次的な要素かもしれないですけどね。

 

そして今回は遂に本編MC無しという思い切った構成が、ジェットコースターのようなセットリストを更に加速させていました。

 

 

 

では語り尽くして満足したので今回のツアーの方の感想をば。以下セトリも載せちゃうのでご注意を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6/23 北陸電力会館 本多の森ホール

  1. Own Civilization (nano-mile met)
  2. フルカラープログラム
  3. シュガーソングとビターステップ
  4. fake town baby
  5. mix juiceのいうとおり
  6. デイライ協奏楽団
  7. フィクションフリーククライシス
  8. ガリレオのショーケース
  9. MIDNIGHT JUNGLE
  10. サンタクロースは渋滞中
  11. 静謐甘美秋暮抒情
  12. クローバー
  13. オーケストラを観にいこう
  14. Dizzy Trickster
  15. 桜のあと(all quarter leat to the?)
  16. ドラムソロ〜パーカッションソロ〜セッション
  17. Invisible Sensation
  18. 場違いハミングバード
  19. 君の瞳に恋してない

アンコール

  1. 春が来てぼくら
  2. 10% roll, 10% romance
  3. Cheap Cheap Endroll

 

改めてセットリストを眺めると、今回のセットリスト、過去の曲はインディーズ時代・1 stの曲が多めなんですね。去年立て続けに出したタイアップ曲で新しくファンになった人向けの配慮、という名の「俺たち昔の曲も良いんだぜ」ってアピールなのかなって思ったり。(もちろん良い意味でね)

 

前述したように、今回はセッション入りの曲が多かった。ちょっと水を飲んで一息休憩を入れた後の曲、具体的に言うと10、14曲は聴きなれない演奏が始まってどの曲くるんだろう?って。

他には7曲目もスラップベースとドラムのセッションから始まりましたが、やっぱり休憩中独特の空白時間から耳慣れない演奏が始まるとワクワク感が違いますねえ。楽しかった。

 

ガリレオのショーケースに意表を突かれた。特にクライマックスでもない所で、しかも次にMIDNIGHT JUNGLEを演奏するという、新旧キラーチューンが肩を並べる挑戦的な配置。もはやキラーチューンすらセットリストの流れを作るのに使ってしまう攻めの姿勢には脱帽。

 

今回のアルバム曲で個人的ベストの「オーケストラを観にいこう」ですが、バンド演奏が始まる前にオーケストラのイントロが付くアレンジが入っていました。アルバムの流れを考えて消したパートなのかな。だとしたら次回シングルのカップリングとかに是非とも完全版を…!

そしてこれは観に行った人にしか通じない話で申し訳ないのですが、ラスト一音をバンッ!って合わせた時、カラフルに煌めいていた照明が全て消えて真っ暗になった演出で息を呑みました。

「凄すぎて拍手出来ないし歓声も上げられない、ステージから放たれる雰囲気を壊したくない」あの感覚をユニゾンで初めて味わった。

 

 

 

セットリストに見慣れない「パーカッションソロ」あるのでその事を。

 

ドラムソロが始まって一通り叩き切ったあと、鈴木さんが上着を脱いでターバンの要領で頭に巻きつけて目隠ししちゃった状態でのドラムソロが再開。すると袖から楽器も下げずにフロントの二人がゆっくりと歩み出て来ておや?と眺めていると、アンプの影からそれぞれパーカッションを取り出して、目隠しして立ち上がっている鈴木さんの手元あたりに掲げるという今までにない展開に…!

ちなみにこの時の二人、ドラム台に片足をのっけて両手でパーカッションを頭上に掲げる体勢を取っていたのですが、ターバンマン状態の鈴木さんの風貌も相まって、怪しい宗教の教祖に供物を捧げる人々に見えて大分面白かったです。笑

パーカッションは斎藤さんがボンゴ、田淵さんがビブラスラップ。ポンポンポポンポンポポンポンポン、カーーーン!!!みたいな。笑

 

最近は定番になりつつあったドラムソロ〜セッション。今回の試みは視覚的に楽しいというのもあるけど、変化球も入れてきてよりエンターテイメント要素が増してきた。面白い。

そういえばアンコール最後の曲でもシャツを被って目隠しして叩いてました鈴木さん。シーツを被ったお化けみたいな生き物がスティック回ししながらドラムを叩くその絵はかなりキモ…面白かったです。ピエロ感が増した鈴木さん。

 

あと今回観てて思ったのは斎藤さん本当に歌上手いなあと。前から上手かったけど今回は更に安定感が増していたし、むしろ喉の調子良すぎて原曲より高い声出てない?って思った場面があったくらい。

 

プロフェッショナルの斎藤さん、曲芸師の鈴木さん、司令塔の田淵さん。少しイビツな三角形。良いバンドだなあ。

 

 

 

ただ一つだけ残念だったのが、MODE MOOD MODE収録曲の「夢が覚めたら」をやらなかったことですね…。良い意味でユニゾンらしからぬ、ストレートな言葉と綺麗なメロディだけで出来ている「良い曲」

ライブで聴いたら壮大で格好いいんだろうなあ、アンコール最後とかでやって新しいユニゾンを見せてくれないかなあ、と紺色の照明をバックに演奏する三人の姿まで妄想を膨らませていたのでこれだけは本当に残念…。お人好しカメレオン状態になったら本当に泣くぞ。

ただ改めて今回のセットリストを眺めると、夢が覚めたらが入る隙が見当たらなくって。敢えて言うなら春が来てぼくらの位置だろうけど、この曲も今回は外せないだろうし。この文句も出る事前提にセットリストを組んだかのよう。そこまで含めて今回のツアーにはおみまいされました。

 

 

 

私は今後MODE MOOD MODEツアーに参加する予定は今の所ありません。最初で最後の一回。というかこのバンドのワンマンは初めましての一回目も衝撃がキモだと思っているので、個人的には複数回参加する意義をあまり感じていないんですよね。

 

この文章を書いた6月から半年くらいツアーが続いて、年末にはまた新しいツアーかなにかが発表されるんでしょう。こんな風に年に一回、私の期待を軽々と超えてくれるライブを観るサイクルがいつまで続いてくれるのでしょうか。楽しみですね。