新木場サンセット

八月が終わる前日、スピッツ夏の恒例イベント新木場サンセットへ。簡単なバンドごとの感想を。

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雨のパレード

私の考える格好いいバンドの条件に「メンバーの立ち姿が格好良くて、各々のプレイに個性がある」というのがあると思っているのですが、この日時初めて観た雨のパレードは正にこの条件を満たしている四人組だった。

 

打ち込みのように正確でブレがなく、同時にモタらせる所はきっちりとモタらせてグルーヴを感じさせるドラムと、踊るのに気持ちいい余白を残したミニマムなベース。細かく手数の多いドラムと最小限で最大の効果を生むベースっていうコントラスト。

そしてモデルかと見間違える程スタイルの良さでダンスの見栄えが良くエモーショナルな歌唱のボーカル。格好良いフロントマン。

バンド編成としては珍しくステージ最奥に陣取るギタリストは結構な割合でハモってて、後半のギターロック然とした曲では前半主役になれなかった鬱憤を晴らすかのようにド派手なギターソロを叩き込んでいた。

 

前半の三曲はマサムネさんが「バンドの枠を超えた音楽で」と表現していてた打ち込みのビートやシンセを大々的に導入したR&B、後半はギターが活躍する正統派なロックミュージックというセットリストでした。近年はD.A.N.の台頭を筆頭に、R&Bやクラブミュージックを人力で演奏するバンドが増えている印象がありますが、雨のパレードはその中庸を行くバンドだなと感じました。そのバランス感覚でこれから様々な人々を虜にしていくのでしょう。いいバンドに出会えた。

 

どの曲も好みだったけど一番はこれかな。哀愁と温もりを同時に感じさせる声って中々無いですよね。

 


雨のパレード - You & I

 

ジョンB&ザ・ドーナッツ!

二人のギタリストにコーラス&シンバルの真城めぐみさん、そしてジョンBという布陣。

バラの花束を抱えたジョンBが「ジュテームジュテーム」って囁きながら登場したのに笑いましたが、まさに60年代のフレンチポップスといった趣のある音楽でした。歌詞は等身大な一人の男の独白なのだけれど。

等身大の生活の中の要素一つ一つに真顔でユルくツッコミを入れていくような「所在ない」って曲が印象的。平日の夜、仕事も家事も終えて寝る前にお酒を飲みながら聴いていたい曲。日常の些細な出来事を視点一つで面白がることが出来る、そう教えてくれる曲。

 


ジョン・B&ザ・ドーナッツ! - 所在ない

 

yonige

チャットモンチー後のガールズバンド」と噂のyonige。格好良かった。私はもう青春を終えてしまった側の人間ですが、それこそ今の中高生が彼女らを観て「私もバンドやろう!」って思わせるような「ロックバンドの格好良さ」がギュッと詰まった30分間。

歪んだギター、直線的なベース、フルスイングで叩くドラム、それだけでロックバンドは十二分、それを体現したステージだった。私はこういうバンド然としたバンドが常にいて欲しい古いタイプの人間なので嬉しい。

 

MCで私達のライブ観るの初めての人ー?って聴いた時に上がった手が予想以上に多かったみたいで、それを見たベースの人が「マジ!?うっはー燃えるぅー!」って叫んでいてその不敵な態度が頼もしかった。

代表曲はこれなのかな。後にマサムネさんが「歌詞が(ドロドロしていて)ヤバい」と言及していました。

 


yonige -アボカド-【Official Video】

 

ミツメ

  1. Disco
  2. セダン
  3. あこがれ
  4. 天気予報
  5. プール(スピッツ cover
  6. 煙突
  7. エスパー

 

yonigeからミツメというこの緊張感の落差よ。まったりと楽しませてもらいながら、この日は緊張感と脱力感を交互に感じさせる出演順なんだと頭の片隅で考えたり。

 

スピッツのプールのカバーが素晴らしかった。高音がキツいのか少しかすれ気味になるボーカルがいい味を出していました。中盤の「ア~~アア~~」はリバーブを深くかけたギターに取って代わられていた。

雨のパレードのボーカルの方は「スピッツのカバーを演奏するより、自分たちの曲だけで」と言っていたけど、こういう自らのルーツを生々しく曝け出すようにカバーを演奏するのもいいですね。私が抱くミツメのイメージは「『名前をつけてやる』をずっとやっているスピッツ」だったので、プールという選曲も◎

 

昨年出した新曲のエスパーがラスト。それまでのユルいサイケデリアを吹っ飛ばすような激しいギターソロを叩きつけて終了。以前から音源ではチェックしていたミツメ、ようやく生で体感できて良かった。

 


ミツメ - エスパー

 

スピッツ

  1. シロクマ
  2. ハニーハニー
  3. 涙がキラリ☆
  4. 夏の魔物
  5. ラク
  6. 甘ったれクリーチャー
  7. 8823
  8. こんにちは 
  9. 新宝島サカナクション cover
  10. スパイダー

 

全体的に超!夏!!なセットリスト。スピッツは本当に四季折々の風景と気温に合う曲ばかりですね。

 

スピッツのライブは今までホール・アリーナでしか観たことが無くて。今回が初めてのライブハウスでのライブ参加だったのですが、音の届き方にこんなに差があるとは思わなかった。

スピッツのライブの魅力の一つはベースの田村さんがアドリブプレイを入れまくる所なのはファンの皆様はご存知だと思いますが、リズム隊の音が力強く体を揺さぶるこの日は田村さんのベースが如実に曲をアップデートさせているのがよく分かりました。

ベースが歌っていたシロクマ、歌をリードするように指板上を縦横無尽に指が動くハニーハニー、プル一発でフリーな空気感のAメロを引き締めていた8823。本当に弾きだすフレーズが百発百中のアレンジ力。ベースライン単品のライブ音源で商品に出来るレベル。売ってください。

 

 

今回のレア曲枠は漣と甘ったれクリーチャー。特に漣が本当に嬉しかった

 

私の中で順位の変動が激しいスピッツのアルバムの中でもさざなみCD五本の指に必ず入るほど好きなのもありますが、漣の歌詞は「亡くなった人に会いに行く曲」だと解釈していて。そして夏を連想する透き通ったギターの音色。そういった様々な要素がかけ合わさって「お盆の曲」というイメージになっていました。だから八月にこの曲を聴けたのは本当に嬉しかった。平成最後の夏、最高の思い出。

「翼は無いけど / 海山超えて / 君に会うのよ」。「会いに行こう」でも、「会うんだ」でもない、女性語の語尾。それが草野マサムネというシンガーにはピッタリだって思わせる魔法。