TODAY/THE NOVEMBERS

TODAY/THE NOVEMBERS

 

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THE NOVEMBERS6枚目のEPTODAY。書いててビックリしたんですけどミニアルバムももう6枚目になるんですね。

 

 

このバンドはインタビューやブログで頻出するワードが時期ごとにそれぞれある(と勝手に思っている)のですが、今回のキーワードは「静けさ」「自然」。

Rhapsody In Beauty期から本格的にノーベンバーズの代名詞となった美しく歪んだ爆音。ライブでもほぼ毎回トドメに爆音をお見舞いするXenoや黒い虹といった楽曲をクライマックスに用意していた事からも、本人達がこの爆音を必殺技としているのが伺えていた。


▲THE NOVEMBERS 「Xeno」 from 1st DVD "TOUR Romancé" LIVE AT STUDIO COAST▲

そして前作のHallelujahは、ノーベンバーズが本来併せ持っていた、幻想的な美しさと暴力的な演奏という相反する二つの要素がついに同居した傑作だった。結成からの11年間でバンドが培ってきた音楽的な要素が惜しげも無く注ぎ込まれた、まさに「これまで」を総括する作品。そのあとに初のベスト盤が出たのは個人的にとても自然な流れだと思っていました。

 

メンバーも最高傑作と公言して憚らない作品が出来ただけに、「これから」にあたる今回の作品はどんな方向性になるかなと色々妄想を巡らせていましたが、蓋を開けてみると前述した武器である爆音を一旦封じ込めた、潔癖なほどに静かな音が鳴っていた。

 

小林さんが「モチベーション0の状況で自然に出来る物を大事にしている」と呟いていましたが、まさに今作がそれなんでしょう。余計な装飾を最低限に抑えた、剥き出しのTHE NOVEMBERS

 

 

 

「みんな急いでいる」冒頭の雨音に導かれて静寂の世界に迷い込んで、

O Alquimista」で不毛な荒野を、「Cradle」では一人ぼっちで宇宙を放浪した気分になって、

TODAY」の最後、小鳥のさえずりを背に賑やかな現実世界へとゆっくりと戻っていく、ちょっとした非日常を味合わせてくれるミニアルバム。

色んな状況で聴いても楽しめるというこの作品。私は帰り道のバスの中で聞いて、少しの間空想に浸るのがお気に入りの聴き方。

 

 

バンド史上最も静謐な作品を携えた今回のツアー、どんな風になるのでしょうか。

ライブ本編とは関係無さそうに見えますが、ツアー会場で販売されるライブ盤が、EPの内容と相反するように爆音と絶唱を叩きつける曲ばかりが並んでいるのも面白い。

そしてこの暴力的なラインナップに、今回のEPに入っていてもおかしくない佳曲meltがひっそりと紛れ込んでいるのがとても気になるところですね。

 

 

以下一曲ごとの短い感想です。

 

みんな急いでいる

「覚えていられないくらい」って歌詞が好き。ただ「覚えていない」だったらこんなに好きにはならなかったと思う。英語で言うとdontじゃなくてcantになっているのが好き。

覚えていないんじゃなくて、そこに留まることをみんなが許さない様をキチンと描いてくれているようで。急ぎたくて急いでいる人ばかりじゃないって。

CD買った時、裏返して出てきたアートワークと合わせて聴きたい曲。

 

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O Alquimista

サビの歌詞が絵本のワンシーンみたいだなって思った。私が今回の四曲の流れに物語性を感じるのはこの曲による所が大きいのかも。

今回の再録で改めて感じたのが、小林さんが書く歌詞は時間軸がハッキリとしているというか。漢字で韻を踏んだり、淡々と冷たい言葉を歌い上げたりとか、「あなたと私は違う、でもそれが何だっていうの?」というテーマが根底にあったり等、やはりこの曲の後に繋がるTo (melt into)の収録曲を思い出す。

 

Cradle

トリビュートアルバム荒らしと名高いTHE NOVEMBERSでしたが、これまでのカバーとは趣向が異なる、割と原曲に沿ったアレンジ。原曲に忠実とは見せつつも、間奏でラルクの別の曲のフレーズを盛り込んだりと、ラルクへの深いリスペクトを垣間見せる一筋縄ではいかないカバー。

そして原曲よりも音数が絞られた結果、高松さんのベースがうねりまくっているのがよく聞こえるのが嬉しい。ドエルTAka~ma~Tsuの面目躍如。

ちなみにCradle以外の曲は今回フレットレス・アコースティックベースで録られたらしく、全編に渡って滑らかでメロディアスなベースラインが聴けるのも嬉しい。ある意味ベースが引っ張っているアルバムなのかも。

 

TODAY

近年の歌詞はどんどんムダな言葉が削ぎ落とされている感じがしていて。これまでも「笑顔が見たい」「いこうよ」といったシンプルな言葉を繰り返す曲はありましたがこの曲は振り切っていますね。

歌詞カードの特徴的な表記、徐々に歌いたい(私があなたにしてあげたい)事が自分で分かってきて、ぐちゃぐちゃで混乱していた頭の中がどんどん純化していく様を表しているように私には見えました。

伝えたいことは「笑顔が見たい 寝顔に触れたい」それに尽きるという。

 

小鳥のさえずりが聞こえてくる中でフェードアウトしていく終わり方が好き。ここからはけんそうが唄う現実世界ですよ。映画でいうスタッフロール。